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臨床について

各疾患説明 脳腫瘍

脳腫瘍について

脳腫瘍にはWHO分類で100種類以上に分類される、非常に多様な腫瘍が含まれています。悪性度もさまざまで、腫瘍の性質や場所により治療方針や治療後の経過が大きく異なります。治療として、手術、放射線療法(通常の放射線治療や定位放射線治療)、化学療法などがありますが、的確な診断をもとに患者さんの状態を考慮に入れながら治療計画を組み立てていくには積み上げられてきた知識と経験を最大限に活用することが必要です。また悪性の脳腫瘍は治癒を得ることが困難なことも多く、新しい治療を開発していくことも要求されています。腫瘍増殖をコントロールするとともに、患者さんにとって最大限の脳機能維持を図ることが大切です。当科では術中MRIやナビゲーションシステムを用いた画像コントロール下での腫瘍摘出や5アミノレブリン酸を用いた光線力学的術中診断を用いた腫瘍摘出、手術中に神経モニタリングをおこなったり、術中に患者さんに覚醒していただき、実際に神経機能検査を行いながら腫瘍の摘出を行う覚醒下手術の手技を用いて脳機能温存を重視しながら手術を行っています。

脳腫瘍とは

「脳」の中にできる出来物だけを言うのではありません。

「頭蓋内」、つまり頭蓋骨の内部にできる出来物はすべて脳腫瘍と呼びます。

脳腫瘍の分類

脳腫瘍の分類には以下のような分類方法があります。

①発生母地を基にした分類

・原発性(げんぱつせい)

頭蓋内の構造物から発生。人口1万人につき年間1-2例発生 。

・転移性(てんいせい)

体の他の臓器から飛んでくるもの。原発部位がわからないこともあり、発生頻度ははっきりしない。全脳腫瘍の約18%を占める。

②腫瘍の存在部位が脳の中か外かで分けた分類

・脳実質内腫瘍

脳の中に発生する腫瘍。

・脳実質外腫瘍

脳を包む膜や脳神経、下垂体などから発生し脳を圧迫するように発育する腫瘍。

③良性か悪性かで分けた分類

・良性脳腫瘍

正常構造物とは明確な境界がある。他部位への転移がない。増殖能力が低い。

・悪性脳腫瘍

正常構造物に染み入るように、破壊するように成長。他部位へ転移がある。増殖能力が高い。

脳腫瘍の種類別頻度

脳腫瘍の種類別頻度

脳腫瘍の症状

・頭痛・吐き気

大きな腫瘍や、水頭症という脳の中に水がたまってしまう状態が生じた結果、頭の中の圧力が上昇し(頭蓋内圧亢進)、生じてきます。

・麻痺

運動野や運動線維近くに腫瘍が発生すると生じます。

・感覚障害

視床や感覚野、感覚線維近くに腫瘍が発生するとしびれや感覚の低下が生じます。

・言語障害

優位半球にある言語野の近くに生じると、頭の中では分かっているのに言葉にできなかったり、言われている言葉が理解できなくなるなどの症状が生じ ます。

・失調症状

小脳や脳幹に生じると、筋肉の曲げ伸ばしの細かな調節が難しくなり、手足の動きがぎくしゃくしたり、体のバランスがとりにくくなります。

・視力・視野障害

視神経や後頭葉、これらを結ぶ神経線維近くに生じると、視力低下や、見えている範囲が欠けてきたりします。

・聴力障害・めまい

音を聞いたり体の平衡感覚を感知する聴神経に腫瘍が発生すると、音が聞こえにくくなり、ふらつきが生じます。また、小脳や脳幹に腫瘍が生じてもふらつきを生じることがあります。

・てんかん

大人になってから生じたてんかんの場合に注意が必要です。

・ホルモン症状

ホルモンの中枢である視床下部や下垂体に腫瘍が発生すると、ホルモンの出が悪くなり,体の調子がすぐれなくなります。また、ホルモンを生じる腫瘍の場合には、必要以上のホルモンによって、出産と関係のない乳汁の分泌や、大人になってからの手足や顔貌の変化、糖尿病や高血圧、肥満などの症状が生じることもあります。また、おしっこが異常に多く出る症状(尿崩症:にょうほうしょう)が生じることもあります。

脳腫瘍の検査

MRI

MRI

腫瘍の場所や、腫れの程度、周囲の正常脳との関係等を観察する。

CT

MRI

腫瘍の場所や、腫れの程度、周囲の正常脳との関係等を観察する。

脳血管撮影

MRI

腫瘍を養う血管の観察や、手術の時に関係しそうな大事な血管の位置を確認する。

核医学検査

MRI

弱い放射線を出すお薬を投与し、腫瘍の活性を観察する。

代表的な脳腫瘍

髄膜腫

髄膜腫は頭蓋骨の中にでき脳を外側から圧迫する良性の腫瘍です。再発しやすいタイプが10-20%ぐらい含まれています。脳ドックなどで無症状の小さなうちに診断されることもしばしばありますが、このような場合にはすぐに手術をする必要はほとんどの場合ありません。しかしながら、とてもゆっくりと発育する場合、無症状でも非常に大きくなって見つかる場合が有り、この場合、将来の症状出現を予防するため、積極的に摘出を行うことがあります。さらに、頭蓋底と言って脳の底面に当たる部分や、脳幹の前面に生じた場合には、大事な脳神経や血管を巻き込んでいることも有り、神経機能温存の観点から良性といえどもすべての腫瘍を摘出することは困難となります。このような場合、術後に放射線治療、なかでも定位放射線治療を併用することがあります。

髄膜腫

神経膠腫(グリオーマ)

神経膠腫(グリオーマ)と呼ばれる腫瘍は脳の実質の中からできる腫瘍で、さまざまな悪性度のものが含まれています。この悪性度を、グレードという言葉で表現します。 グレード1は、増殖能も低く、神経症状を出さない範囲で最大限摘出することにより、その後は画像(MRIやCT)検査で経過観察を行うことが基本となります。 グレード2は、やはり神経症状を出さない範囲で最大限摘出するとともに、発生部位、症状の有無等により、しばらく画像経過観察を行うか、早期に放射線治療を追加するのかを選択します。グレード2の神経膠腫の中には、経過中に悪性転化を生じ、後に述べるグレード3や、最も悪性度が高いグレード4の神経膠芽腫に変化するものがあります。この場合、手術摘出可能であれば追加摘出を行い、放射線治療を受けていなければ、放射線療法と化学療法を併用し、以前にすでに放射線療法をうけていれば、化学療法による治療を開始します。グレード3およびグレード4の神経膠腫の場合には、神経機能温存を第一に考えた上で最大限摘出を行い、術後早期に放射線治療に抗癌剤を併用して治療を開始します。こののち、維持化学療法を継続していきます。抗癌剤でよく使われるのはテモゾロミドという薬剤です。内服可能な薬のため、外来通院での維持化学療法が可能です。この薬剤の効果は腫瘍が特殊な酵素を持っているかどうかで事前に推定することができます。また、最近では術中に摘出腔に留置するタイプの抗がん剤(BCNUウエハー)や、腫瘍から産生される血管新生因子(VEGF)を標的にした、分子標的薬(ベバシズマブ)の使用も可能となっています。最も悪性度の高い膠芽腫(グリオブラストーマ)では平均生存が1年余です。

神経膠腫(グリオーマ)

術前造影剤にて白く染め出されていた腫瘍塊は摘出されています。

悪性リンパ腫

悪性リンパ腫は、以前はそれほど多くなかった腫瘍ですが、最近増加傾向にあります。手術はおもに診断をつける目的で行われます。放射線・抗癌剤が有効な腫瘍で、メソトレキセートという薬が標準的に使われています。下のMRI像は手術後の薬剤使用前画像と放射線と抗癌剤の使用後の画像です。このような治療は効果が高いのですが、再発もおこりやすいので、退院後も通院を続けることが必要です。

悪性リンパ腫

小児脳腫瘍

子供にできる脳腫瘍は成人にできるものと大きく違っています。髄芽腫(メドロブラストーマ)や胚細胞性腫瘍(ジャーミノ−マ等)など抗癌剤での特殊な治療を要する腫瘍も多く、当科では小児科と連携して治療を進めています。

下垂体線腫

下垂体前葉から発生する良性腫瘍で、原発性脳腫瘍の18%、人口10万人に対して年間の発症率がおよそ2人(男2人、女2.5人)。プロラクチン(PRL)、成長ホルモン(GH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)などを過剰に産生してホルモンの異常をきたす機能性下垂体腺腫(functioning)とホルモンは産生せずに大きくなり、視力や視野障害をきたして見つかる非機能性腺腫(non-functioning)に分類されます。非機能性腺腫が44%と最も多く、ついでプロラクチン産生腺腫、成長ホルモン産生腺腫の順にみられます。

下垂体腺腫が見つかった場合でも、腫瘍のタイプ、患者さんの年齢、腫瘍の大きさなどを考慮して治療方針を決める必要があり、たとえばプロラクチン産生腺腫のように最初の治療は薬物を用いての治療であるものもあり、必ずしも手術を受けなくてもよい場合があります。手術が必要な場合、腫瘍が小さければ鼻の穴から内視鏡を用いた内視鏡下経鼻経蝶形骨洞手術が基本ですが、腫瘍が大きい場合には開頭手術が必要になることもあります。どちらの場合も入院期間は2週間前後です。当科は滋賀県においては最も下垂体腺腫の手術症例が多く、これまでに蓄積された経験も豊富です。また、下垂体腺腫の場合は、眼科、内分泌代謝科、麻酔科など脳外科以外の専門診療科の協力が必要ですので、スタッフが充実している本院に是非ご相談ください。

 

代表的な脳腫瘍

術前のMRI
腫瘍が造影され、白く映っています。

代表的な脳腫瘍

手術後のMRI
腫瘍は全摘出され、造影されなくなっています。

 

詳細は脳神経外科学会が提供している以下のURLを参照してください。

http://square.umin.ac.jp/neuroinf/medical/index.html