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臨床について

各疾患説明 頭部外傷

頭部外傷

頭部外傷には、頭部打撲により生じる軽症のたんこぶ(皮下血腫)から、皮下や骨に接する膜の下に血の塊(血腫)ができる帽状腱膜下血腫、骨膜下血腫や、重症になると頭蓋骨骨折、頭蓋骨の内側に出血し血腫ができる急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、さらに脳が傷つく脳内血腫や脳挫傷があります。頭蓋骨の内側で脳は硬膜というしっかりとした硬い膜によりつつまれています。頭蓋骨が骨折し骨と硬膜の間に血腫ができるのが急性硬膜外血腫です。また脳表の血管が傷つき硬膜と脳の間に血腫ができるのが急性硬膜下血腫です。ともに頭蓋骨という硬い殻で囲まれた空間の中で血腫が大きくなるので、脳にかかる圧力が外に逃げられず、直接脳を内側に圧迫します。これにより頭蓋骨内の圧力が上昇し、生命維持に重要な働きをする脳幹を圧迫し命に関わる状態が起きます。これが脳ヘルニアという状態です。外科処置の大きな目的は頭蓋内の圧力を制御することにあります。しかし硬膜外の出血による圧迫のみなら、血腫を取り除き圧を解放することで改善が期待できますが、急性硬膜下血腫、脳内血腫、脳挫傷では圧上昇の原因をとり除いても脳自体の損傷を伴うことも多く、重篤な後遺症がでる可能性が高くなります。

以下代表的な頭部外傷の治療についてガイドラインに沿って説明します。

1.閉鎖性頭蓋骨陥没骨折

陥没骨折の整復が神経症状や外傷性てんかん(晩期てんかん)の頻度を改善するかどうかは証明されていません。

◆手術適応基準

(1) 1 cm 以上の陥没や高度の脳挫滅の存在
(2) 審美的に容認しがたい頭蓋骨変形がある場合
(3) 静脈洞を圧迫する場合など

◆手術方法

陥没骨片挙上術あるいは開頭整復術

 

2.開放性頭蓋骨陥没骨折

(1) 硬膜損傷がある場合(穿通性頭部外傷)には、硬膜閉鎖を速やかに行うことが重要。
(2) 硬膜損傷がない場合(非穿通性頭部外傷)には保存的療法も可能であるが、頭皮は十分な洗浄とデブリードマン(débridement)を行い閉鎖する必要がある。

◆手術適応基準

(1) 高度の汚染創の存在
(2) 高度の挫滅創、粉砕骨折の存在
(3) 脳実質の露出、脳脊髄液の漏出など硬膜が損傷して硬膜内外の交通が疑われる場合
(4) 骨片が脳内に存在する場合
(5) 骨片に関連した出血が止まらない場合(静脈洞の損傷など)
(6) 陥没骨片による静脈洞圧迫に起因する静脈還流障害が存在する場合
(7) 1 cm 以上の陥没や高度の脳挫滅の存在
(8) 審美的に容認しがたい頭蓋骨変形がある場合など
(9) 副鼻腔を含む損傷が存在する場合

◆手術時期

24 時間以内に手術。

手術の時期が受傷後48 時間を超えると感染の頻度は明らかに増加。

◆手術方法

(1)

デブリードマン(débridement)
汚染創の場合は培養検査を行う。

(2)

硬膜閉鎖
頭皮のみを縫合閉鎖するのではなく、硬膜閉鎖を確実に行う(とくに創汚染のある場合)。硬膜欠損が大きく縫合閉鎖が困難な場合は、自家組織を補填し硬膜形成を行う(血行の豊かな組織は感染に抵抗性が強い)。

(3)

頭蓋形成の時期
高度の汚染創の存在、高度の挫滅創、粉砕骨折の存在、48 ~72 時間以降の手術、 骨片が脳内に存在する場合、脳脱などがあれば、二段階手術(汚染骨をいったん除去し、後日頭蓋形成術を行う)を考慮。頭蓋形成の時期については汚染状況や術後の経過により判断。感染が十分に治まったことを確認してから行う。

術前:前頭部に陥没骨折を認める

術前:前頭部に陥没骨折を認める

術後:チタン製プレートを用いて形成。

術後:チタン製プレートを用いて形成。

3.急性硬膜外血腫

◆手術適応基準

(1)

厚さ1 ~2 cm 以上の血腫、または20 ~30 ml 以上の血腫(後頭蓋窩は15 ~20 ml以上)や合併血腫の存在時には原則として手術を行う。

(2)

切迫ヘルニアのある場合、神経症状が進行性に悪化する場合は緊急手術の適応となる(とくに、受傷後24 時間以内の経時的観察とCTを繰り返すことが必要である)。

(3)

神経症状がない場合は厳重な監視下に保存的治療を行うことも可能である。

◆手術時期

可及的速やかに行うのが望ましい。

◆手術方法

開頭血腫除去術が原則である。

術前:前頭部に陥没骨折を認める

急搬入30分で意識障害の進行を認めた。CTでは搬入時目立っていた右の血腫(赤矢印)よりも薄かった左の血腫(青矢印)の著明な増大、脳の圧排所見の悪化を認める。

 

術後:チタン製プレートを用いて形成。

術中所見:頭蓋骨の骨折(赤矢印)を認め、骨直下に厚い血腫を認める。

4.急性硬膜下血腫

◆適応基準

(1)

血腫の厚さが1 cm 以上の場合,意識障害を呈し正中偏位が5mm以上ある場合

(2) 明らかなmass effect があるもの、血腫による神経症状を呈する場合
(3)

当初意識レベルが良くても神経症状が急速に進行する場合

(4)

脳幹機能が完全に停止し長時間経過したものは通常適応とならない

◆手術時期

可及的速やかに行うのが望ましい。

◆手術方法

大開頭による血腫除去術が原則である。

局麻下に穿頭し小開頭にて減圧を試みる場合もある。

外減圧術については、効果ありなし双方の報告があるが結論は出ていない。

救急搬入時CT:厚い血腫により、脳は強く変位している。

救急搬入時CT:厚い血腫により、脳は強く偏位している。

 

術後:チタン製プレートを用いて形成。

術中所見:硬膜の下に厚い血腫を認める(赤矢印)。血腫を除去すると、圧迫し変形した脳が確認された(青矢印) 。

術後:チタン製プレートを用いて形成。

術後CT:血腫は除去され、脳の偏位も解消された。

5.脳内血腫・脳挫傷

◆手術適応基準

以下のいずれかの場合は外科治療を考慮してもよい

CTで血腫や挫傷性浮腫によりmass effect を呈する症例のうち、神経症状が進行性に悪化する症例や保存的治療で頭蓋内圧亢進が制御不能な症例
後頭蓋窩病変では頭部CT上、第4脳室の変形・偏位・閉塞を認める症例、脳底槽の圧迫・消失を認める症例、閉塞性水頭症を認める症例で、神経症状がある症例

◆手術時期

外科治療は可及的速やかに行うことが勧められる。

◆手術方法

(1)

開頭血腫除去術が勧められる。

(2) 著しい挫傷性浮腫に対しては、挫傷脳組織の切除(内減圧術)を考慮しても良い。
(3)

外減圧術を考慮してもよいが、その有効性についての根拠はまだない。

 

救急搬入時CT:厚い血腫により、脳は強く変位している。

救急搬入時CT:脳内に大きな血腫が存在(赤矢印)。血管障害(動脈瘤の破裂や、高血圧性脳内出血など)による血腫との鑑別のため、CT血管撮影を施行し、血管異常のないことを確認している。

 

術後:チタン製プレートを用いて形成。

術中所見:頭蓋骨に骨折を認め(赤矢印)、脳内に血腫を認めた(青矢印)。

 

術後:チタン製プレートを用いて形成。

術後CT:血腫は摘出され、脳の偏位も解消されている。

参考 重症頭部外傷治療・管理のガイドライン(第3版)