
慢性硬膜下血腫
頭部外傷から3週間から3ヶ月程度で硬膜と脳の間に緩徐に液状の血腫が貯留して生じます。受傷直後は無症状で画像の異常がなくても、血腫が緩徐に増大することで脳を圧迫し、頭痛、手足の麻痺、意識障害などを生じます。高齢の方に多く、認知機能低下や記憶障害(物忘れ)などの症状を呈することも多いです。
診断はC T検査で行い、頭蓋内、脳の表面に三日月状の血腫が描出されます。時に血腫による圧排で脳の変形(正中偏位)や脳室(脳脊髄液の貯留する空間)の変形を認めることがあります。血腫の量が少ない場合や症状を伴わない場合は経過観察や内服加療を行うこともありますが、血腫量が多い場合や症状を伴う場合には手術加療を行います。
手術では局所麻酔下に穿頭(せんとう:頭蓋骨に穴をあける)を行い、貯留した血腫を体外に排出します。血腫の溜まっていた空間に一晩チューブを留置し、残存した血腫をさらに排出させることもあります。ほとんどの場合手術により症状は改善しますが、麻痺が残る場合にはリハビリテーションが必要なこともあります。適切な治療により良好な予後を見込むことができますが、1割程度の患者さんで再発(血腫の再貯留)することがあり、複数回の手術を要することもあります。
基礎疾患や抗血栓薬内服のため再発リスクの高い患者さんには、局所麻酔下に血管内カテーテルで栄養血管である中硬膜動脈を詰めて止血を図る治療(中硬膜動脈塞栓術)を行っています。


出血源の中硬膜動脈を液体塞栓物質で塞栓しています。