
片側顔面けいれん
自分の意志とは無関係に顔の片側がぴくぴくする病気です。血管が顔面神経を圧排することで生じており、外科的治療で根治が期待できる疾患の一つです。
症状
典型的な片側顔面けいれんは、下側のまぶたがぴくぴくすることから始まり、数ヶ月から数年後には頬やくちびるの端、顎にまでぴくつきが広がります。ひどい場合には、発作中には片目が開かないこともあります。鼓膜近くの筋肉にも顔面神経が関与しますので、耳なりを訴える患者さんもいます。人前で話したり、緊張したりするとけいれんがひどくなりやすいようです。また、顔面の筋肉の強い収縮でけいれんが誘発され、開閉眼(眼をギュッとつぶって開く)や口角を強く挙上する(口をイーとのばす)と、下まぶたに痙攣が出ることは、片側顔面けいれんの診断に役立ちます。患者さん本人は非常に気に病んでおられることが多く、ものごとに集中できない、面と向かって人と話す気になれない、などと仕事や生活に支障をきたすこともあり、中にはうつ状態にまでなっている患者さんもいます。
病態
動脈硬化を起こして蛇行した血管(主に動脈)が顔面神経に接触、刺激することでけいれんを引き起こすとされています。
診断
MRIを撮像し、顔面神経を圧迫している血管がないか確認します。

治療法
片側顔面けいれんの主な治療法は3つあります。
内服治療
精神安定剤やてんかんの薬が処方されます。効果が少ないことがほとんどです。
注射
ボツリヌス菌が作る毒素を用いる治療で、アラガン社のボトックス注射が広く知られています。この毒素を希釈して痙攣する顔面の筋肉の何カ所かに注射し、人為的に顔面筋を軽く麻痺させることでけいれんを抑える方法です。効果がでるまでにはおよそ1週間程度かかります。また効果は通常3〜4ヶ月継続しますが必ず再発してきます。このため繰り返しボツリヌス毒素を注射する必要があります。繰り返しの注射で毒素に対する抗体ができてしまい、その効果が減弱する場合もあります。
手術(微小血管減圧術)
95%程度の確率で片側顔面けいれんを治癒できる、最も確実で有効な治療法と考えられています。けいれんを起こす側の耳の後ろの皮膚を切開し頭蓋骨に小さな窓をつくります。顔面神経の根元を観察し、神経を圧迫してけいれんの原因となっている血管を神経から離れたところへ移動させることにより、顔面けいれんを治します。すぐに効果が出ることが多いですが、効果が出るまで1−2ヶ月かかることもあります。合併症としては手術側の聴力低下、顔面神経の麻痺などがあります。