滋賀医科大学 脳神経外科学講座

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三叉神経痛

三叉神経痛は、顔の感覚を脳に伝える神経である三叉神経が障害され、顔や口の中に激しい痛みが起こる病気です。外科的治療で根治が期待できる疾患の一つです。

症状

三叉神経の支配領域(顔面、口腔粘膜、歯肉)に突発的に激痛、電撃痛が数秒〜数十秒間発生するのが特徴的です。痛み発作の合間は痛みが全くないか、あっても鈍い痛み程度です。「食事をする、ものを噛む、歯を磨く、服を着る、化粧をする、洗顔をする」など通常の日常生活動作で痛みが誘発されます。激しい痛み発作を避けようと飲食を控えて、体重減少や脱水などの体調不良を起こす人もいます。触ると痛みが誘発される部分(trigger zone:トリガーゾーンと呼ばれています)があり、鼻の横などを触ると、顔面にビリッと痛みが走るのは三叉神経痛に特徴的な痛みです。

病態

動脈硬化などで蛇行した脳の動脈が頭の中で三叉神経を圧迫するのが主な原因とされています。三叉神経はその名の通り3本に別れており一本目の枝がおでこ、2本目の枝が頬、3本目の枝が下あごからの感覚を脳に伝えています(下図)。痛みの起こる部位は、この枝の領域で明確に分けられます。虫歯の痛みと思って歯医者さんにかかると虫歯はなく、三叉神経痛と診断されることもあります。

診断

MRIを撮像し、三叉神経を圧迫している血管がないか確認します。

治療法

三叉神経痛の主な治療法は4つあります。

内服治療

てんかんの薬であるカルバマゼピンという薬が良く効きます。しかし副作用でふらつきや眠気が出たり、肝臓の機能が悪くなることがあります。この薬以外に神経痛の薬(ミロガバリンベシル酸塩やプレガバリン)が有効なこともあり、効果と副作用の観点から薬を選択する必要があります。

ブロック療法

三叉神経に局所麻酔薬を注射して痛みをとります。薬のかわりに高周波電流で神経を焼いて破壊することもあります。速効性ですが、ほんとんどの患者さんで痛みが再発します(ブロックの種類で鎮痛が得られる期間は違います)。また顔面の知覚障害やしびれが残ることが欠点です。

ガンマナイフ治療

三叉神経にガンマナイフと呼ばれる放射線を照射することで痛みを抑える方法です。効果が出てくるのにしばらく時間がかかります。治療成績は施設により違いますが、概ね6-8割程度の有効率が報告されています。痛みが完全に消失しないことや痛みが再発する場合があること、しびれの合併症が生じることがあるのが欠点です。外科手術が難しい場合など局所麻酔でできることがメリットです。

手術(微小血管減圧術)

9割近い有効率がある、最も確実で有効な方法と考えられます。手術直後から痛みが消えることがほとんどで即効性もあります。稀に再発することもありますが、顔面にしびれや感覚異常が残ることはほとんどありません。内服治療で痛みがおさまらないときや副作用等で内服継続が難しい場合、根治的な治療を希望される場合に行われることが多いです。
手術では、三叉神経を圧迫する痛みの原因となっている血管の移動を行います。全身麻酔下に、痛みのある側の耳の後を切開し、頭蓋骨に小さな窓をつくります。そこから三叉神経の全域を観察し、神経を圧迫している血管を神経から離れたところへ移動させます。欠点として、手術する側の聴力低下(耳が聞こえにくくなること)が起きることが稀にあります。