滋賀医科大学 脳神経外科学講座

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転移性脳腫瘍

がんの脳への転移は、頭頚部癌のように直接脳に入り込んでくる場合もありますが、多くは原発巣のがんが、血管の中に入り込み、がん細胞が血液に混ざって、血流に乗って脳に入り込んで起こります。がん細胞の混ざった血液は、心臓を経由して、全身に送られており、その一部が脳に巡って脳転移を起こします。また脳以外の場所にも運ばれて転移している可能性もあります。

脳に転移する原発巣の割合

2005年から2008年の4年間に脳神経外科で診療した転移性脳腫瘍の原発巣の割合を示します。日本において発生した原発性脳腫瘍の種類別頻度を示します。肺癌の転移が最も多く、乳癌、大腸癌が続きます。

社会の高齢化に伴い、またがん治療の進歩や画像診断の進歩により、発見される転移性脳腫瘍は増えています。

転移性脳腫瘍の診断

画像診断を行います。頭部CTやMRIが有用で、造影剤を使用すると腫瘍がはっきり見えやすくなります。転移性脳腫瘍が疑われた場合はがんの治療歴や全身の造影CT検査、PET検査などが診断に有用です。

転移性脳腫瘍の治療

開頭による腫瘍摘出術、放射線治療、抗がん剤治療があります。

腫瘍が3cm以上ある場合などは手術が選択されますが、手術に伴う合併症、後遺症の可能性はあります。摘出腔から再発しやすいため、放射線治療を追加する場合があります。

放射線治療は転移性脳腫瘍に有効であり、小さい腫瘍では手術せずに放射線治療を行ったりします。多発性の転移では全脳照射することがありますが、腫瘍が一つだったり、数個だけなら定位放射線治療を行う場合も多いです。定位放射線治療の代表的なものとしてはサイバーナイフやガンマナイフがあります。

抗がん剤は最近では腫瘍細胞の中の分子に作用して抗腫瘍効果を発揮する分子標的薬が開発されてきており、肺癌の脳転移などで有用なものも出てきています。